二酸化炭素の補給方法

二酸化炭素 (CO2)

二酸化炭素は無臭の気体で、私たちが呼吸している空気中にほんの少し含まれているに過ぎません。空気中に含まれる量はわずか0.03%(300ppm)ですが、地球上のすべての生命に欠かせない大切な成分なのです。

植物はおよそ80〜90%の炭素と、窒素・カルシウム・マグネシウム・カリウム・リンや数%の微量元素をふくんだ水で構成されています。植物中の炭素のほとんどが、空気中のわずか300ppmの二酸化炭素からもたらされています。

植物は日照時間中に、気孔とよばれる葉の穴から二酸化炭素を取り入れます。その際に酸素をはき出します。この作用を光合成といいます。このはき出された酸素は、地球上の人間や動物、海洋生物に使われます。植物の光合成がなければ、動物も人間も生きていくことができません。

地球の大気中に含まれる酸素の量はおよそ20%です。そのほとんどが植物の活動によって生じたものです。光合成によって二酸化炭素と水が結合して、糖類と酸素分子が作られます。ブドウ糖(C6H12O6)などの単糖は、植物のエネルギーとなり、炭水化物・アミノ酸・たんぱく質・繊維質・葉・根・幹・花といったより複雑な植物のパーツを形成していきます。

私たち動物が植物のはき出した酸素を吸い込み、植物に必要な二酸化炭素をはき出す、という真の共生関係がそこにあります。太古の昔−地球上に動物がまだ出現しておらず植物しか存在していない時代の大気圏の様子は、今とはすっかり違っていました。二酸化炭素の自然発生源のひとつである火山活動がより盛んで、大気中の二酸化炭素の含有量は現在の3〜4倍はありました。植物は力強く繁殖して、巨大な木生シダが旺盛に繁栄していました。私たちが恩恵を受けている石炭や石油、天然ガスなどの鉱床は、この時代の植物から作られています。

現代の空気に含まれる植物に有益な二酸化炭素は増えつつあります。というのも、人間がより多くの燃料を燃やすので、副産物としてより多くの二酸化炭素が発生しているということなのです。ここわずか40年の間に、大気中の二酸化炭素は270ppmから300ppmへと11%以上も増加しています。温室効果が原因だとおおくの科学者が懸念しています。大気中に二酸化炭素が増えるほど、地球の温度は上がっていきます。急激な地球温暖化は、氷床を溶かし、海岸沿いの都市に洪水を起こし、砂漠を拡大し、飢きんや激しい気候変動を引き起こします。それらの現象は、自然の摂理ともいえます。ますます増える二酸化炭素は、海洋で大量に吸収されて、地球上の植物の90%にのぼる藻やプランクトンに与えられ、あとの10%の地上の植物にも同じように吸収されています。大気中のこのような二酸化炭素の減少は、こうして調節されています。現在、科学者たちは環境を安定させる要因である自然の摂理(自己調整機能)を把握するための研究を進めています。


二酸化炭素の補給について

生物学者や植物生理学者は、空気中の二酸化炭素含有率が高いほど植物成長に有益であると認識しています。園芸家や温室栽培家は、二酸化炭素補給装置を使用して植物の成長率を高め、よい収穫結果を出しています。

ここ最近の人工光による室内栽培・温室栽培の台頭や、水耕栽培技術の進歩によって、二酸化炭素を補給する必要性が急激に増えています。閉ざされた温室や室内栽培室では、二酸化炭素を使い果たし成長が止まるという事態がしばしば起きています。二酸化炭素量の増減が植物の成長率をどう変化させるか、下のグラフを参照にしてみてください。
[CO2図表]

200ppm以下になると、光合成に必要な二酸化炭素が足りなくなり、実質的に成長停止の状態になります。大気中の二酸化炭素の含有量は300ppmなので、この量での成長率を100%とします。グラフを見ると、二酸化炭素の量を増やすと成長率が通常の2倍以上になるのが分かります。二酸化炭素量が2000ppmを超えると、植物に有害になりはじめ、4000ppmを超えると人間にも害を及ぼします。

HID(高輝度放電)ライトシステムや水耕栽培システム、温度・湿度などの空調管理機器、成長率・品質・サイズ・収穫時期を決めるバランスのとれた水耕専用肥料によって理想的な栽培環境が整うようになり、必要な二酸化炭素量を決定できるようになりました。

二酸化炭素を補給するには、5つの方式があります。
1.炭化水素燃料を燃やす
2.圧縮して詰められた二酸化炭素(液化炭酸ガス)を使う
3.ドライアイスを使う
4.発酵させる
5.有機物を腐らせる

この5つをひとつずつ検証してみましょう。二酸化炭素補給時の利点と欠点を実用比較するために、高さ・幅・奥行き2メートルもしくは8立方メートルの栽培室を基準にして考えていきます。

1.炭化水素燃料を燃やす
これは、長年にわたって二酸化炭素補給に使われてきたもっとも一般的な方式です。多くの農家やハウス栽培において大規模農業で使われています。よく使われる燃料として、プロパンガスやブタンガス、エチルアルコールや天然ガスが挙げられます。これらの燃料を燃やすときに出る青や白や無色の炎からは、有効な二酸化炭素が発生しています。赤やオレンジや黄色の炎の場合は不完全燃焼なので一酸化炭素が発生しています。この一酸化炭素は、たとえどんなに少量であっても植物にも人間にも危険を及ぼします。イオウやイオウ化合物が含まれている燃料は、有害物質を副産物として発生させるので使わないでください。

これらの燃料を燃やす業務用の二酸化炭素発生装置の多くは大きすぎるので、小規模の温室や室内栽培には不向きです。小さなものでは、コールマンのランタンやブンゼンバーナー(理科の実験で使用するガスバーナー)や小さなガスストーブなどが使えます。どの器具でもすべて熱が発生するので空調設備が必要になりますが、冬期や寒冷地での栽培には向いているといえます。

二酸化炭素の補給率は、使う種類の燃料の量によってコントロールします。プロパンガス、ブタンガス、天然ガスを使う二酸化炭素補給装置の場合は、1キロの燃料を燃やすと、およそ3キロの二酸化炭素と1.5キロの水蒸気が発生します。同時に約12300キロカロリーの熱も発生します。この数値は、その他の燃料を使った場合は異なります。

これを高さ・幅・奥行き2メートルの基準栽培室で考えると、エチルアルコールやメチルアルコールを20グラム/日の割合でガスランプやバーナーで使用すると、部屋がちゃんと密閉されていれば二酸化炭素含有率を1300ppmに増やすことができます。

植物が消費する二酸化炭素は1時間に100ppmなので、理想値を1500ppmとして補給基準値を1300ppmとします。通常の空気中に含まれる二酸化炭素の値は300ppmだということを念頭に置いておいてください。換気率(漏れも含む)は、一般的な栽培室や温室の換気率と同じく2時間で100%とします。多くのすき間や漏れがある場合には、換気率がかなり上がって300ppm以上に補給した二酸化炭素も失われます。換気扇を使うと補給してもそのまま排出されてしまうので、二酸化炭素補給装置を使う意味がなくなってしまいます。

栽培室や温室の中の空気を循環させる扇風機は効果的です。空気が動かないと「空乏層作用」が起こります。この作用は、植物が葉周辺の二酸化炭素をすぐに消費し尽くして二酸化炭素不足を起こします。二酸化炭素を含んだ新鮮な空気が葉の表面に運ばれてこないと、光合成が弱まり最終的には中断してしまいます。

二酸化炭素を理想値に保つ方法にはいろいろあります。
1.温室や栽培室がちゃんと密閉されてないなら、二酸化炭素補給装置の補給率を50%増やす。
2.気温が20℃から30℃にあがったら、補給率を20%増やす。さがった場合は同様に減らす。
3.室内にいっぱいになるほどに育てている場合は、補給率を20〜30%増やす。

二酸化炭素の補給量を決定する最終的な要素は、栽培室のサイズです。ガス燃料を燃やす場合は、下記の計算式で簡単に求められます。基準栽培室は、高さ・幅・奥行き2メートルで、体積は8立方メートルになります。お使いの栽培室が高さ3メートル×幅3メートル×奥行き6メートルならば、体積は54立方メートルになります。エチルアルコール+ガスランプ方式を二酸化炭素補給に使うには、8立方メートルの栽培室でアルコール重量20グラム/日で1300ppm、という割合を使って求めることができます。

20グラム/日 :  8立方メートル
----------------------------------
  ?オンス/日 : 54立方メートル
たすき掛け算をして、
    8X? = 20×54
      ? = (20×54)÷8
      ? ≒ 135 グラム
ということで、3メートル×3メートル×6メートルの体積54立方メートルの栽培室の二酸化炭素を1300ppmに補給するには、1日につきエチルアルコールが135グラム必要ということになります。

同じ栽培室で、さらに200ppmの二酸化炭素を補給して1500ppmにするためには、上記の比率を使って求めます。
 
1300ppm  : 135 グラム
-----------------------------
  1500ppm :  ? グラム
たすき掛け算をして、
  1300×? = 135×1500
       ? = (135×1500)÷1300
       ? ≒ 155.77 グラム
ということで、3メートル×3メートル×6メートルの体積54立方メートルの栽培室の二酸化炭素を1500ppmまで補給するには、1日につきエチルアルコールが155.77グラム必要ということになります。

異なる炭化水素燃料を使う場合には、発熱量(カロリー)に関して十分考慮しなければなりません。発熱量/時(ワット)がエチルアルコールの半分の割合なら、二酸化炭素を理想値に近づけるために2倍量を燃焼させて補給することになります。二酸化炭素補給の必要量は、使用する燃料の炭素含有量によって異なります。発熱量(カロリー)、発熱量/時(ワット)は、器具の購入元や説明書などに記載されています。

2.圧縮して詰められた二酸化炭素(液化炭酸ガス)を使う
これは、二番目に人気のある二酸化炭素補給の方式で、かなり正確な制御ができます。圧縮された二酸化炭素は、高圧で金属製ボンベに詰められて液化炭酸ガスとして提供されています。入手しやすく取り扱いしやすい規格のもので2.5〜7キロのガスボンベがあります。圧力は1600〜2200PSI(ポンド/平方インチ)です。

液化炭酸ガスを使って二酸化炭素を補給するには、以下の設備が必要です。
1.液化炭酸ガスのボンベ
2.圧力を調節するレギュレーター
3.流量計 (フローメーター)
4.電磁弁 (プラスチック製か金属製)
5.24時間のON/OFFプログラムタイマー
6.チューブ (設置用と接続用)

注記 :標準状態における重量1キロの二酸化炭素は、およそ19.2立方フィート(約544リットル)に相当します。

液化炭酸ガス装置の準備
これはあらかじめ設定しておいた時間間隔で、調整された二酸化炭素量を栽培室に注入するという方法です。圧力を調節するレギュレーターは、ガスボンベの気圧を2200PSIから流量計で制御できる圧力(100〜200PSI)に減圧します。流量計は、電磁弁がONになっている時間に立方フィート/分(CFM)で設定された大量の二酸化炭素を送り込みます。プログラムタイマーは、昼時間の長さと電磁弁のON時間の間隔を調節します。

ここでは、装置の目盛りがフィート法であることが主なので、高さ・幅・奥行き8フィートの栽培室をもちいて説明します。実際的なメートル法の数値が必要な場合は「CO2流量計算プログラム」をお使いください。

この液化炭酸ガス装置を、高さ・幅・奥行き8フィート(約2.44メートル)の栽培室で使うときは、枯渇しはじめる200ppmから1500ppmに上げるのに十分な二酸化炭素を加える必要があります。そこで、体積512立方フィート(約14.5立方メートル)の栽培室に1300ppmの二酸化炭素を加えることになります。そうして、植物の消費分と栽培室から 漏れ出す二酸化炭素を考慮して、一定間隔で二酸化炭素を注入して約1500ppmをキープするようにします。

ここで、注入する時間間隔(二酸化炭素の補給時間)を2時間毎と設定しましょう。まず、体積512立方フィートの栽培室内の二酸化炭素を200ppmから1500ppmに増やすのに加える二酸化炭素量を計算します。この計算で、栽培室の体積512立方フィートに0.0013(1300ppm)をかけ算して、必要量=0.66立方フィート、というように求められます。レギュレーターの値を100PSIにして、流量計の値を0.33CFM(立方フィート/分)、または20CFH(立方フィート/時)と設定してください。こうしてタイマーの設定を2時間毎に2分間のON時間とすれば、最適値1500ppmをキープするために必要な0.66立方フィートが補給されることになります。

液化炭酸ガス1キロは、大気中では約19.2立方フィート(約544リットル)の二酸化炭素に相当します。液化炭酸ガスは、1キロあたり約450円で提供されています。昼時間18時間で2時間毎に0.66立方フィートの割合で補給する場合は、維持費が一日につき約14円となります。タイマーがONになるのは、ライトをつけている昼時間だけになるようにしてください。植物は光がある時にのみ二酸化炭素を消費できます。暗いときには植物は二酸化炭素を消費できません。

この液化炭酸ガス補給方式の長所は、かなり正確にコントロールできることと装置(設置費用 3〜5万円)が簡単に手に入ることです。また、栽培室内に余分な熱を加えず、小規模な栽培室にも効果的です。しかも、はじめの設備投資以降の維持費はそれほどかかりません。

3.ドライアイスを使う
この方式は小さな栽培室、とくに冷却すべき栽培室におすすめです。ドライアイス(固形二酸化炭素)は、−78.5℃と非常に冷たく、取り扱いには手袋の着用が必須です。ドライアイスは氷屋や精肉店など食材卸業者から購入できて、値段も比較的安価です。

高さ・幅・奥行き2メートルの基準栽培室では、1300ppmになるように補給するのに、一日につき約200グラムが必要です。栽培室がかなり暖かい場合は、200グラムのドライアイスは18時間よりずっと早く溶けてしまいます。これをコントロールするには2つの方法があります。まずは、250グラム程度を小さくカットして、2時間ごとに栽培室に加えていくという方法です。もうひとつは、断熱発泡スチロールの箱に小さな穴をいくつか開けてドライアイスを必要量だけ入れる方法です。この方法は溶ける速度をかなり減速しますが、照明点灯時間の18時間で200グラムが溶けるという速度を「よく理解して」おかなければなりません。余ったドライアイスは、昇華して消失するのを防ぐために、冷凍庫に保管しておきます。

二酸化炭素は空気より重たいので、それを利用して植物に分配するためには、ドライアイスまたはその容器を、植物の上にたいてい設置してある照明反射板に取り付けるという方法があります。二酸化炭素が照明の上から流れ落ちて植物をむらなく浸します。循環用扇風機を使っている場合には、ドライアイスまたはその容器を、その扇風機の直前か直後に設置して均等に分配できるようにします。どの二酸化炭素補給方式にも共通することですが、栽培室や温室の密閉には最善を尽くしてください。とくに出入口や壁の下部には最大限の努力をしてください。

ドライアイス補給方式は、8立方メートルの基準栽培室で一日につき約50円の維持費がかかります。ドライアイスの利点といえるのは、補給の際に生じる冷却作用です。

4.発酵させる
砂糖は、イースト菌の作用による発酵でエチルアルコールと二酸化炭素に変化します。この方式には、以下の材料が必要です。

1.適当なサイズの容器 (プラスチック製かガラス製)
2.砂糖 (白砂糖か転化糖)
3.イースト、醸造用
4.イーストフード
5.シーリング材、セロファンテープ、ふた
6.プラスチックチューブ 1/4規格
7.密閉弁 1/4規格
8.風船
9.ジャー、もしくはビン

この発酵方式は、二酸化炭素の補給にとても効果的で費用も比較的かかりません。白砂糖やイーストはどこでも安く売られています。発酵方式の詳細は、ただいま編集中ですので、後日アップします。

5.有機物を腐らせる
有機物がバクテリアの活動により腐食分解されるときに、二酸化炭素が発生します。熱帯ジャングルの植物は、青々とした緑の葉を繁らせ旺盛に成長しています。動植物の死骸のさかんな自然腐食がその理由です。この腐食により有効な二酸化炭素を通常の300ppmから1000ppm以上に増やすことができます。この環境を屋内でも再現できます。ほとんどコストはかかりませんが、臭気が出て衛生的ではありません。そのような理由などから、あまりおすすめはできません。水耕装置が最適に設置されている栽培室や温室は無菌状態を保っているので、それを崩壊させる恐れもあり不要なバクテリアや病害虫の発生で有害な影響を及ぼしかねません。




要するに、これらすべての方式は適切に設置されれば機能しますし、二酸化炭素補給を実施することは、室内栽培にとても効果的です。実用的な方法、費用のかからない方法、時間と注意を要する方法とさまざまですが、すべての化学反応にはかならず温度が関わってきます。光合成も例外ではありません。38℃以下の高温の環境で二酸化炭素の補給を行うと光合成が活発になるので、より多くの光が必要です。また、より多くの水と栄養素も必要になります。 ときには二酸化炭素補給によって、予想をはるかに超えた驚くべき成長を調整するために剪定の必要もありうるのです。